母乳育児中は要注意!ビタミンDの欠乏を防ぐには?
突然ですが、「母乳にはビタミンDがほとんど含まれていない」
という情報を聞いたことはありませんか?
ビタミンD欠乏症(くる病)関連の報道で知ったというママさんもいらっしゃるかも知れません。
完全母乳育児をしているママさんにとっては、とても心配な話題ですよね。
そこで今回は、そんな気になる母乳育児とビタミンDの関係について見ていきたいと思います。
☆ビタミンDって何?不足するとどうなるの?
ビタミンDとは、植物由来のエルゴステロールから生成される「ビタミンD2」と、動物由来の7-デヒドロコレステロールから生成される「ビタミンD3」の総称です。
ビタミンDは、ミネラルの代謝や恒常性の維持、とりわけ骨の代謝に関係しているとされ、ビタミンDが不足すると、乳幼児では骨がうまく形成されずに身長の伸びが悪くなったり、手や足の関節の変形、運動発達の遅れなどの症状が現れるようになります。
これがビタミンD欠乏症で俗に言う「くる病」です。
成人でもビタミンDが不足すると、骨軟化症や骨粗しょう症を発症してしまうと言われています。
乳幼児がビタミンD欠乏症になると、最初の症状として歩き方がおかしくなることが多いのですが、乳幼児はもともとO脚なので症状が進行するまで気づかれないことが多いそうです……。
☆母乳育児ではビタミンDが足りない?
骨の形成に重要なビタミンDですが、母乳中に含まれているビタミンDの量は少なく、母乳だけではビタミンDが足りないことがわかっています。
具体的には、母乳1リットルあたりにビタミンDは約0.6~3.0μg含まれており、赤ちゃんが1日にだいたい0.78リットルの母乳を飲むとすると、0.47~2.34μgのビタミンDを摂取していることになりますが、
ビタミンDの摂取基準量は生後0~5ヶ月で2.5μg/日、生後6~11ヶ月は5.0μg/日となっていますので、母乳だけでは足りないことが分かりますね。
一方、ミルクにはビタミンDが添加されているため、ミルク育児の場合には完全母乳育児よりもビタミンD欠乏症になるリスクは低いようです。
実際に岡山大病院の研究結果では、人工栄養児と母乳栄養児を比べると、明らかに母乳栄養児の方がビタミンD欠乏の傾向が見られたとされています。
けれども、ビタミンDは母乳やミルクから摂取する他に、離乳食などの食事から摂取したり、日光に当たることでも合成することができますので、完全母乳育児だからという理由だけで、ビタミンDが欠乏してしまうということは、まずありません。
ただし、近年ビタミンD欠乏症の子どもが増えてきており、完全母乳育児をしている場合には注意をしておく必要があります。
☆母乳育児中のビタミンD欠乏症を防ぐために
ビタミンD欠乏症は、栄養状態の悪かった時代には多くみられていた病気でしたが、栄養状態が改善してからは、日本においてはほとんどみられなくなった病気でした。
ところが、前述した通り、2000年を過ぎた頃から再び患者数が増えてきています。
これは、母乳育児が普及したということもありますが、
食物アレルギーやその予防のために離乳食の開始時期を大幅に遅らせたり、
ママさんが自己流の除去食を行ったりしてしまうこと、
アトピー性皮膚炎や紫外線の問題などで赤ちゃんに日光を当てることを避けるようになったこと
が原因だと考えられています。
食事では特に卵の制限からビタミンD欠乏症が起こることが多いそうで、通常であれば、卵を1個食べるだけで十分な量のビタミンDを摂取することができるのですが、
卵アレルギーを恐れるあまり、赤ちゃんに卵を一切食べさせないようにしているママさんもいらっしゃるようなのです。
ママにとっては赤ちゃんのことを大切に思うがゆえの行動なのですが、極端な食事制限や極端に日光を避ける生活は、赤ちゃんがビタミンD欠乏症になるリスクを高めてしまいます。
したがって、完全母乳育児をしている場合には、離乳食にはビタミンDを含む卵黄や魚、しいたけなどを意識してメニューに取り入れ、外遊びも帽子をかぶるなどして適度に行うようにしましょう。
赤ちゃんにアレルギーがある場合には、離乳食の進め方や除去食の仕方など、先生とよく相談してみて下さい。母乳で足りない分のビタミンDは食事や日光でしっかり補って、ビタミンD欠乏症を予防しましょう!